• 弁護士コラム

【運送会社向け】トラック運転者の労働時間の管理の重要性について

運送会社において問題となる労働紛争としては、「トラック運転者からの未払賃金(残業代)請求」が最も多いと思います。
トラック運転者は、その業務の性質から拘束時間が長くなる傾向にあるため、未払賃金(残業代)も高額となり、500万円以上の請求を受けるケースも珍しくありません。

「トラック運転者からの未払賃金(残業代)請求」では、どこまでが「労働時間」なのかが主たる争点になります。

この点、例えば事務職の会社員のような職種では、どこまでが「労働時間」なのかは争点となりません。なぜなら、朝に出社してタイムカードを押してから夕方に退社する際にタイムカードを押すまでの時間から昼休憩の時間を差し引いた時間が労働時間であり、タイムカードの打刻が正確であれば、基本的には問題にならないからです。

一方で、トラック運転者の場合も、トラックのタコグラフを見れば、トラックに乗車してから降車するまでの時間は分かります。
タコグラフを見て、トラックが走行している時間は労働時間になりますが、トラックが走行していない時間はどうでしょうか。荷扱い等の作業時間は労働時間となることで異論がなさそうですが、荷待ちの時間はどこまで労働時間とするべきでしょうか。また、会社の指示ではなく、トラック運転者独自の判断で、数時間前(場合によっては前日)から現場に向かい、車内で仮眠や食事、ゲーム等をしていることもあります。その時間も労働時間とするべきなのでしょうか。

以上のように、トラック運転者は、その業務の性質から拘束時間が長くなる傾向にあるため、どこまでが「労働時間」なのかを議論する必要があるのです。
そして、冒頭で申し上げたように、高額な未払賃金(残業代)請求を受けるケースがあるのは、労働者(トラック運転者)側はトラックに乗車している拘束時間のすべてを「労働時間」として請求してくるためであり、使用者(運送会社)側はこうした請求に対する防衛策を講じておく必要があります。

使用者(運送会社)側の採り得る最も効果的な防衛策は、トラック運転者にリアルタイムで、どこまでが「労働時間」なのかを申告してもらうことです。

デジタルタコグラフを採用している場合には、トラック運転者が車内で操作することで、運転時間、作業時間、待機時間、休憩時間等を記録できる機能があると思います。
多くの運送会社では、トラック運転者に対する指導・教育が徹底できておらず、せっかくの機能を活かしきれていませんが、トラック運転者にデジタルタコグラフをリアルタイムで操作させ、正確な記録を残すことで、高額な未払賃金(残業代)請求を受けるリスクを大幅に減じることができます。

アナログタコグラフを採用している場合には、運転日報を利用してください。この運転日報でも、運転時間、作業時間、待機時間、休憩時間等をリアルタイムで正確に記録することで、デジタルタコグラフと同様の効果を得ることができます。

運送会社は、未払賃金(残業代)請求の標的になりやすく、トラック運転者に限定した広告を出している労働者側の法律事務所もあるほどです。
そのため、運送会社としてもできる限りの防衛策を講じる必要があり、また防衛策を講じることで労働紛争となるリスクは大幅に減じることが可能になります。

本コラムをお読み頂きまして、まだ何も対策を講じていない、もしくは、不十分であるとお感じになった経営者の方は、ぜひ一度ご相談頂ければと存じます。
初回相談は無料でお引き受けしておりますので、お気軽にお問い合わせください。