• 共有不動産の
    分割
  • 借地に関する
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  • 賃貸経営に
    関するトラブル
  • 建築紛争・請負契約に
    関するトラブル
  • 不動産登記手続
    (時効・相続・
    抵当権抹消等)
  • その他不動産に
    関するトラブル
  • 共有物の分割方法の種類について教えて下さい。

    共有物の分割の方法としては、①現物分割、②代金分割、③価格賠償による分割の方法があります。

  • 共有物分割訴訟における現物分割の方法は、具体的にどのように分けるのですか。

    現物分割は、共有となっている不動産を分筆して共有者間で分ける方法です。

    また、裁判例上は、共有者の一部の者に持分権の価格を上回る現物を取得させるとともに、持分権の価格を下回る現物しか取得出来ない他の共有者に、当該超過取得者から超過分の対価を支払わせる方法(一部価格賠償)という、現物分割と一部価格賠償を併用する方法による分割も認められています。

  • 共有物分割訴訟における代金分割の方法は、具体的にどのように分けるのですか。

    代金分割は、共有物を競売してその売却代金を共有者間で分ける方法です。

    法律上は、現物分割が原則であるため、現物分割が不可能であるか、現物分割によって共有物の価格が著しく減少するおそれがあるときに代金分割の方法が認められます。

  • 共有物分割訴訟における価格賠償による分割の方法は、具体的にどのように分けるのですか。

    価格賠償の方法については、上記の一部価格賠償のほか、共有者の一人(または数人)に現物を取得させ、その者に他の共有者の持分権の対価の支払を命じるという方法(全面的価格賠償)も認められています。

    ただし、全面的価格賠償の方法により分割をすることが出来るのは、諸般の事情を総合的に考慮して、共有物を共有者の一人又は数人に取得させることが相当と認められ、この方法によっても、共有者間の実質的公平が害されないと認められる特段の事情が存在する場合に限られています。

    特段の事情については、持分権の価格の評価が適正に行われていることと、支払を命じられる者に十分な支払能力があることが必要になります。

  • 遺産分割と共有物分割の違いは何ですか。

    不動産を共有するに至る経緯には様々な原因があり、その中で相続により不動産を共有するに至ることがあります。

    相続が発生すると、被相続人の不動産については、遺産分割協議が成立するまでは、各相続人の遺産共有状態になっています。

    このような場合、遺産分割手続によるのか、共有物分割手続によるのかが問題になるわけです。

    この点、共同相続人間における遺産共有関係の解消は、遺産分割によるべきであり、共有物分割によることはできません

    もっとも、遺産共有持分と通常の共有持分が併存する場合における共有関係の解消については共有物分割請求の手続によるものとされています。

    このように共有者間の事情によって取るべき手続が変わってくるため、共有物の解消についてお困りの方は、まずは専門の弁護士に相談されることをお勧めします。

  • 借地上の建物の増改築・建替を地主が許可してくれない場合には、どのように対応することができますか。

    借地契約上、①借地権の条件として、借地上に建築できる建物の種類(居宅・店舗・共同住宅等)、建物の構造(木造・鉄骨造・鉄筋コンクリート造等)、建物の規模(床面積・階数・高さ等)、建物の用途(自己使用・賃貸用・事業用等)その他の条件を制限している場合があります。

    その他に②借地上の建物の増改築等の制限として、借地上の建物の建替え(改築)・増築・大修繕等をする場合には地主の承諾が必要であると定めている例もあります。

    借地契約としては、①の借地権の条件のみを定めているものと、①の借地権の条件に加え、②借地上の建物の増改築まで定めているものも存在します。

    ①の借地条件の例としては、「借地上の建物は、非堅固建物に限る」という内容のもの等がありますが、これは上記の建物の構造に関する制限であり、このような制限がある場合、借地上の木造建物(非堅固建物)を鉄筋コンクリートの建物(堅固建物)に建て替えることができません。

    そのため、この場合、地主との間で借地条件を変更することについて合意する必要があります。

    任意に地主が応じてくれない場合には、借地条件変更の申立てを裁判所にする必要があり、裁判所が相当と認めたときには、借地条件が変更され、希望する建物の建築が可能になります。

  • 借地上の建物の譲渡に地主が応じてくれない場合どのように対応することができますか。

    借地人が借地上の建物を第三者に譲渡する場合は、原則として土地の借地権を譲渡したことになります。

    この点、土地の賃借権については、地主の同意がなければ借地権の譲渡ができないため、まずは地主から同意を得られるように示談交渉をする必要があります。

    示談交渉で同意を得られない場合には、土地の賃借権譲渡の申立てを裁判所にする必要があります。

    この申立ては、借地人が第三者に借地上の建物を譲渡しようとする場合において、その第三者が土地の賃借権を取得しても地主の不利となるおそれがないにも関わらず、地主が同意しないときに、裁判所から地主の承諾に代わる許可を受けることができるものです。

    地主の不利となるおそれがあるか否かについては、賃借権譲受人の資力と地主と賃借権譲受人との人的信頼関係維持の可否の観点から判断されることになります。

  • 借地上の建物に居住しており、借地権設定契約の期間が終了しますが、地主から契約更新の拒絶をされています。地主が契約を更新してくれない場合には何か対応はできますか。

    地主が更新を拒絶するためには、正当事由が必要ですので、正当事由がない場合には、更新について合意を得られなくても、そのまま建物に居住することができます。

    ただし、正当事由が認められるか否かについては、後記する通り専門的な判断が必要ですので、一度専門家にご相談されることをお勧めします。

    借地契約の更新に関しては、借地借家法第5条及び第6条に定めがあり、第6条によれば、正当事由がある場合でなければ、地主は更新を拒絶することができないとされています(なお、平成4年7月31日以前に設定された借地権に関しては、旧借地法が適用されますが、この点について実質的には変更はないと言われています)。

    そして、正当事由の有無については、①地主及び借地人が土地の使用を必要とする事情のほか、②借地に関する従前の経過、③土地の利用状況、④地主が土地の明渡しと引換えに借地人に対して財産上の給付(立退料の提供等)をする旨の申出をした場合におけるその申出を考慮して判断されます。

    このように①~④の事情を総合考慮して判断されますが、②~④は①の補完要素と考えられており、メインは①の事情です

    ①については、土地の使用の目的(居住用か営業用か等)、職業・家族構成・収入の程度、他に土地を所有しているか等の事情を考慮して、それぞれの当該土地を必要とする程度を判断されます。

    例えば、地主としては、借地上に家族と同居する建物を建築するために土地を使用する必要がある一方で、借地人は借地上の建物を自ら使用しておらず、他にも土地建物を所有しているような場合には、正当事由は認められやすくなります。

    なお、④は①~③の最終的な補完要素ともいわれているものですが、実際のところ④の金額によっては話し合いがまとまることも多いため、①~③を法的に分析した上で、④の額を検討することが、実際上は重要といえるかもしれません。

  • 借地人が地代を支払ってくれない場合どのように対応することができますか。

    約定した地代は、当然借地人に対し請求することができますが、借地人が地代を支払わないため、借地人と地主との間の信頼関係が破壊されるに至っていれば、借地契約の解除をすることもできます。

  • 借地人が更新料を支払ってくれない場合どのように対応することができますか。

    更新料については、①そもそも支払う義務があるのかどうか、②支払う義務があるとして支払わない場合には解除ができるのかが問題となります。

    ①更新料支払義務の有無、更新料の相場について

    更新料の支払い義務があるか否かについては、まずは借地契約書上更新料を支払うことになっているのか否かによります。

    契約書上更新料を支払うという内容になっていなければ借地人から更新料を支払ってもらうことはできません。

    借地契約の場合には、契約書に更新料支払特約が存する場合には、法定更新の場合でも更新料支払義務があるとされています。

    更新料の額は、一般に借地権価格の3~5%程度が相場のようです。

    ②解除ができるか否か

    一般に賃貸借契約を解除することができるか否かについては、裁判例は賃貸借契約を継続し難い事情(信頼関係の破壊)があるときに初めて解除が認められるとされています。

    この点、更新料の、約定した更新料の不払いは、更新料支払合意に至る経緯、更新料不払いの経緯その他の事情からみて、借地人及び地主の間の信頼関係を著しく破壊すると認められる場合には、更新後の賃貸借契約の解除原因となるものと考えられています。

    このような考え方を受けて、裁判例で更新料の不払いがある場合に解除を認めた判例では、借地契約において更新料の支払いが、将来の賃料の一部、更新についての異議権放棄の賃貸人及び賃借人の従前の債務不履行行為についての紛争の解決金としての性質を有する場合で、賃料の支払いと同様に更新後の借地契約の重要な要素として組み込まれ、当該契約の当事者の信頼関係を維持する基盤をなしているときは、その不払いは、この基盤を失わせる著しい背信行為に当たるとして更新後の借地契約の解除を認めたものがあります。

    具体的にどのような場合に借地契約の解除が認められるか否かについては、個別の事情によるため、困ったときは弁護士に相談されることをお勧めします。

  • 私が大家をしているアパートの一室を借りているAさんは、いままで家賃が遅れたことはありませんでしたが、ここ3か月分が滞納となっています。おかしいと思い、緊急連絡先となっている父親に電話をして聞いたところ、「詳しくは言えないが逮捕されてしまい、すぐには出られないようです。いまは〇〇警察署にいます。ご迷惑をおかけします。」とのことでした。賃借人が警察署や拘置所、刑務所にいる場合には、支払請求や契約解除、明渡しの裁判はできないのですか。

    賃借人が警察署や拘置所、刑務所にいる場合でも、居場所さえ特定できていれば、滞納賃料の支払請求や賃貸借契約の解除をすること、また明渡訴訟を提起することは可能です。

    賃貸借契約解除の意思表示は、通常は内容証明郵便にて行いますが、警察署や拘置所、刑務所の所在地に賃借人宛てとして送付すれば、名宛人がそれらの刑事施設にいる限り、施設側が受領拒否することはありませんので、送った書面を賃借人が実際に見ると否とにかかわらず、契約解除の効果を発生させることができます。

    また、刑事施設にいる賃借人を被告として訴訟提起をする場合、上記と同様に被告がそれらの刑事施設にいる限り、施設側が受領拒否することはありませんので、訴状の送達が容易となり、比較的早く手続が進んでいくといえます。

    そうはいっても、刑事施設にいる賃借人の同意のもとに賃貸借契約の解除や明渡しを行うことができれば、時間の面でも費用の面でもそれに越したことはありませんので、接見や面会に赴くか近親者を通して賃借人の退去意思を確認し、同意書面を取った上で明渡作業をするのが望ましいといえます。なお、賃借人が逮捕されたからといって、決して賃貸人が勝手に明渡作業を行ってはなりません(自力救済の禁止)。

  • 私がマンションの部屋を貸している賃借人が賃料を滞納しているため、滞納賃料を支払うよう請求したところ、「敷金を3か月分預けているだろう。そこから遅れている家賃に充てといてよ」と言われました。敷金を預かっている場合は、その金額になるまでは滞納家賃を請求できず、賃借人から充当しろと言われたら従わなければならないのですか。

    賃貸人が敷金を預かっている場合でも、その金額に関係なく滞納家賃を請求でき、賃借人からの敷金を滞納賃料に充当しろとの要求には従う必要はありません。

    最高裁の確定した考え方では、「敷金返還請求権は、賃貸借終了後家屋明渡し完了の時において、それまでに生じた被担保債権を控除しなお残額がある場合に、その残額につき具体的に発生するものと解すべきである。」としています。したがって、賃借人がまず明渡しを先にしなければ、敷金返還請求権は具体的に発生しないことになります(よって、賃借人の敷金返還請求権が明渡し前に差し押さえられた場合でも、賃貸人は敷金を滞納賃料等損害金に充当でき、余りが出れば債権者に支払えばよいということになります。)。

    ご質問のような賃借人の要求は相殺の意思表示といえますが、相殺をするには同種の相対立する債権があることが要件の1つとなっており、明渡し前の賃借人にはそもそも敷金返還請求権がありませんから、債権は相対立しておらず、相殺はできないことになります。

    ただし、賃貸人が承諾するのであれば、まだ敷金を返さなくても良い利益や将来の損害金が担保される利益をあえて捨てて、入居中の賃借人の滞納賃料に敷金を充てる内容の合意をすることも可能です。この場合には、後で争いが起きないように、いつ、何月分の滞納賃料にいくらの敷金を充当し、敷金の残額はいくらとなったか等について、明確な合意書面を作成しておくべきです。

  • 私がアパートを貸している賃借人の中に、合計で約2か月分の賃料を滞納している人がいるのですが、破産手続をしていて、来週、免責決定が出る見込みであると聞きました。私はこの賃借人に過去の滞納賃料を請求することはできないのでしょうか。

    また、賃貸借契約書に「賃借人が破産した場合には賃貸借契約は当然解除となる」と入れてありますので、また滞納が起きないか不安なのでもう出て行ってもらおうと思いますが、可能でしょうか。

    まず、破産手続をして免責決定が出た場合に免責(帳消し)となる賃借人の滞納賃料債務ですが、「破産手続開始決定」が出た日がいつかが重要な基準となり、その日までの賃料は免責されることになりますが、その日の翌日以降の賃料は免責されませんのでなお請求できることになります。なお、免責されることになる滞納賃料債務も、賃借人の方から真意に支払いたいとの申出がなされ弁済されるならば、賃貸人は受領することができ、後になって返す必要はありません。

    また、賃借人が破産したことが契約解除事由となると賃貸借契約書に明記していたとしても、賃借人の破産のみを理由として契約解除することはできないと考えられます。

    旧民法では、賃借人が破産宣告を受けたときは、賃貸借に期間の定めがある場合でも、賃貸人または破産管財人は民法617条の規定に従って解約の申し入れをすることができる、と定めていましたが、法改正によりこの規定は削除されているため、賃借人が破産したことを理由として賃貸人から一方的に解約の申入れをすることはできなくなりました。

    そういった法改正の経緯も踏まえ、賃貸借契約に特約があったとしても、破産のみを理由とする賃貸人からの契約解除は認められないといえます。

  • アパートの大家をしていますが、賃借人の1人から、「台所の天井から雨漏りがし、玄関からは虫が大量に入ってくるので、瑕疵物件だ。だから賃料は半分しか払わなくて良いんだ。」と一方的に告げられ、その後の最初の支払期日には、実際に約束の半分の賃料しか払われていません。どのように対処すべきでしょうか。

    まずは、賃借人から賃借物件に瑕疵があるとの申告があった場合には、賃貸人としてはその状況を早急に確認し、物件瑕疵といえれば、賃貸人の義務として、修繕等の手立てを講ずるべきです。

    何が物件瑕疵に当たり、どこまで修繕すべきかは非常に難しく、物件の築年数や賃料帯等の事情をも考慮しつつケースバイケースの個別具体的な判断をするしかありませんが、住居は雨風をしのげることが最低条件といえますので、天井からの雨漏りや壁に穴が開いていることによる通風・漏水については、一般的に賃貸人が修繕すべき瑕疵となるでしょう。

    一方で、ご質問にあるような虫の玄関からの侵入については、物件周囲の環境や季節、虫の量等にもよりますが、ある程度はやむを得ないといえ、賃借人の方でも防虫スプレー等で対処することが可能といえますので、たとえば下水管が破損していることによるものである等構造的な原因がない限りは、物件瑕疵とまでは言えない場合があるでしょう。

    賃借物件に瑕疵がある場合は、一般論として、その瑕疵の程度に応じて賃料も割合的に減額されることになりますが、結局のところ、その割合がいくらかは、裁判をしなければはっきりしません。

    そのため、ご質問のような場合には、賃貸人としては可能な限り雨漏りの修繕や防虫対策を行った上で、約定どおりの賃料全額を収受できることを前提に計算し、支払われていない部分については賃料不払いであるとして、賃借人に支払いを請求すべきです。そして、なおも賃借人が納得しないで賃料が半分しか支払われないことが続き、未払い分が合計して賃料の3か月分のラインを超えてきた場合には、賃貸借契約を解除した上で明渡訴訟を提起すべきでしょう。

    なお、その明渡訴訟の中では、賃借人から「物件瑕疵があるため約束の賃料から〇割減額されている」との主張がなされることが予想されますが、物件瑕疵の状態や程度、その結果どれだけ賃料が減額されることになるのかは、賃借人の方が主張立証すべき責任を負うことになります。賃貸人としては、物件瑕疵があるとの申告を受けて、いつどのような修繕をし、対策を講じたか等について書き留めておいたり、当該箇所の写真を撮影しておいたりする等の対策をしておくべきでしょう。

  • 私は、所有している戸建て住宅を4人暮らしのご家族に賃貸しています。賃貸借契約の際、お住まいになっているお父さんのお兄さんを連帯保証人とする保証契約を締結しており、これと並んで、家賃保証会社の家賃保証システムを利用しています。現在は賃料の滞納はありませんが、将来滞納が起きた場合には、どのように保証してもらうのがよいでしょうか。また、滞納により契約を解除しても明渡しがなされない場合、保証人に対して明渡しの保証を請求できますか。

    まず、滞納が発生した場合の保証人・保証会社への請求の点ですが、以前は賃借人の親族等が連帯保証人になることが多く(人的保証)、賃借人が滞納した賃料を保証人が支払えなかったり、無理して支払い保証人の生活の基盤が崩れたりするといった問題が起きていました。しかし、近年では家賃保証会社による機関保証のシステムが根付いてきて、多くの保証会社がさまざまな内容の保証商品を出しています。滞納が発生した際に、賃借人のご親族等である保証人に対して保証債務の履行請求を行い支払交渉していくにも多大な労力を要しますし、確実に弁済してくれるかも不透明ですので、まずは保証会社の機関保証システムを利用した保証を受けることをお考えになるべきでしょう。

    保証会社に機関保証してもらうに当たっては、保証の内容や手続等が保証約款に明記されていますので、保証約款の内容をよく知り、そこに書かれた手続等を守ることが何よりも重要です。保証の仕方にも、その月の賃料の入金がなければ数日後に1か月分の賃料相当額が前払いされるものや、賃借人の明渡しが完了した後に清算を行い、一括して滞納賃料等相当額が支払われるもの等、保証商品によって区々です。

    また、機関保証では、賃貸人に対して届出・報告義務や協力義務が課せられている事項が多くあり、それに違反すると(たとえば、期限までに滞納の事実を報告しなかったり、勝手に賃借人と賃料の値上げ交渉をしたりする等)、保証免責といって、滞納賃料分を肩代わりしてくれないことになってしまいますので、注意が必要です。

    なお、保証約款の内容にもよりますが、保証会社の他に親族等の保証人がいても、保証会社が滞納額の全額を保証してくれることがほとんどです。さらに、多くの保証会社が明渡訴訟や明渡強制執行の費用も負担するとしていますので、滞納賃料と明渡しまでの損害金を範囲とする人的保証よりは保証の範囲が広くなっているのが一般です。

    ただし、保証人が実際に住んでいるわけではありませんので保証人に対して直接明渡しを請求したり、賃借人が確実に明渡すようにすることを請求したりすることはできないと解されています。

  • 私はワンルームマンション3棟を所有し、主に単身者や留学生に貸しているのだが、賃料の支払期限を守らなかったり、何の連絡もなく家財道具を残して勝手に退去し、連絡が取れなくなったりする賃借人が多く、困っていた。そこで、1年前から、賃貸借契約書に「賃料の支払いを10日間遅滞した場合には、賃貸借契約は当然に即時解除となり、賃貸人は居室の鍵を交換できるものとする。その時点で居室内に存する動産については、賃借人はその所有権を放棄し、賃貸人がいかなる方法で処分しても異議を述べない。」という条項を入れた。実際に、そのように家賃の支払いが遅れた場合には鍵を交換して入れないようにし、玄関ドアに入室禁止の貼り紙をして、賃借人の残置物は搬出し、まだ使えそうな物は、近所に「雑貨パラダイス」という店を開いて売り、滞納賃料に充てている。賃借人が全部納得してハンコを押しているんだから、私には何の問題もないだろう。

    そのような行為は民事上・刑事上の責任を問われる可能性がきわめて高いので、即座にやめてください。

    まず、「賃料の支払いを10日間遅滞した場合には、賃貸借契約は当然に即時解除となり、・・・」という契約条項を入れていたとしても、1か月分の賃料の10日ばかりの滞納で即時解除され、生活の本拠を失ってしまうというのは賃借人にとってあまりに酷といえますから、契約書の文言どおりには解除の効果は発生しません。賃貸人からの契約解除が認められるかについては、裁判所は賃貸借契約書の記載をさほど重視せず、あくまで「賃貸人と賃借人の信頼関係が破壊されたといえるか」という基準に従って判断しており、賃料滞納のみであれば、一般的に3か月滞納が解除できるラインとなっています(法律等に規定があるわけではなく、裁判所の運用です。)。

    したがって、あなたの行為は、法律的に賃貸借契約が解除されていないにもかかわらず、勝手に鍵を替えて賃借人が居室に入れないようにし、無断で居室内に立ち入って賃借人の物を奪って売却するというものですので、賃借人の賃借権(居室の占有権)や財産の所有権を違法に侵害する不法行為として、民事上の損害賠償責任を負います。また刑事上も、住居侵入罪や窃盗罪等といった犯罪が成立します。

    注意していただきたいのは、仮に、法律的に賃貸借契約解除の効果が有効に発生していたとしても、その後に鍵交換や賃借人の荷物の引き揚げを行う行為は、同様に民事上の不法行為に該当し、刑事罰の対象となる可能性がきわめて高いことです。約束を守らず勝手なことをした賃借人のためにお金も手間も使いたくないというお気持ちは分かりますが、「自力救済を行うことは厳に禁じられている」ということを肝に銘じ、しっかりと法的手続をとって対処していくことを強くお勧めします。

    なお、賃料の支払いがない賃借人や迷惑行為をする賃借人の玄関ドア外側に、賃貸人や管理会社が警告等の内容の貼り紙をする行為ですが、指摘した行為が真実であっても名誉棄損に該当し、民事上・刑事上の責任を負う場合がありますので、第三者から見えないように封書として投函する等、慎重な対応をするようにしてください。

  • 建ててもらった住居が、それ自体で見れば雨漏りや傾斜等欠陥といえる箇所はないのですが、契約の時に特にお願いした高齢者向けの設備が一部施工されていませんでした。このような場合でも、施工業者に対して何か法的な請求ができますか。

    できる可能性があります。

    法的に問題となる瑕疵(欠陥)には、①通常有すべきものとして一般的に求められる品質・性能を欠いていること(客観的瑕疵)と、②契約によって有すべきことが求められた品質・性能を欠いていること(主観的瑕疵)、の2種類があります。

    若い人が居住するには設備的に何ら問題のない住宅であっても、契約の際に特に高齢者向けの設備を設けることを合意していたのであれば、そのような設備が施工されなかったことは、主観的瑕疵として欠陥に該当するといえます。

  • 住宅の不具合現象の原因が特定できたとして、それが法的な瑕疵(欠陥)に当たるかどうかは、どのようなものを基準に判断されるのですか。

    ①契約書や設計図書の記載、②建築基準関係法令に定められた技術基準、③住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の住宅工事仕様書に定められた技術基準、④権威ある建築団体が定める標準的技術基準、⑤慣行上認められている標準的な工法、等を基準に判断されることになります。

  • 施工会社にひどい工事をされて、もう全く信頼することができないのですが、支払ったお金を返してもらって、他の施工会社に建て直してもらうことはできますか。

    できる可能性があります。

    建てられた建物に重大な欠陥があり、建て替えるしか方法がないような場合には、請負契約を解除することが認められると考えられています。

    契約を解除した場合には、施工会社に支払ったお金を返してもらうことができ、契約解除と合わせて、重大な欠陥のある建物の取壊し費用相当額の損害賠償を請求することもできます。

    また、請負契約は解除せずに、施工会社に対して建替え費用相当額(建物の取壊し費用と再築費用)の損害賠償を請求することもできます。

  • 建ててもらった建物に一部雨漏りのする欠陥があり、修補することが可能であると聞きましたが、建物の施工会社ではなく他の業者に修補してもらい、建物の施工会社にその費用を請求することはできますか。

    できます。

    欠陥の修補が可能な場合でも、施工会社に修補請求をせずに、他の業者に修補してもらうこととし、その修補費用の額を、施工会社に損害賠償請求することもできます。

  • 店舗用の建物を建ててもらいましたが、一部に契約内容と異なった施工がありました。その部分を契約内容どおりに直してもらう傍ら、施工に問題のない部分で先行して営業を開始したいと考えていますが、修補工事で営業開始が遅れた分の損害について、施工会社に請求することはできますか。

    できます。

    請負契約の目的物に瑕疵(欠陥)があった場合には、その欠陥を修補せよと請求することと合わせて、その欠陥から発生した損害があれば、その賠償を請求することができます。

  • マイホームの建築をお願いし、工事の様子が気になるので毎日現場で作業の様子を見ているのですが、私の目から見てもずさんな作業が目立ち、このままではどんな欠陥のある家を建てられてしまうのか、不安でなりません。いまの施工会社との契約を解除することはできますか。

    できます。

    民法上、請負人(施工会社)が仕事を完成させない間は、注文者は、いつでも損害を賠償して請負契約を解除することができるとされています。したがって、注文者は、注文した物が完成する前の段階で、その物を作ってもらう必要がなくなれば、請負人が損をしないように損害を賠償する必要はありますが、一方的に契約を終えることができます。

    ただ、ご質問の場合には、請負人(施工会社)に落ち度があると疑われます。請負人に法的な帰責性がある場合には、請負人の債務不履行を理由として契約を解除でき、合わせて、注文者に生じた損害を賠償せよと請求することができます。

  • 建ててもらった建物に欠陥があった場合に施工会社に対して請求することができる損害賠償ですが、欠陥を修補するためにかかる費用(修補できないほどの重大な欠陥である場合には建物の取壊し・建替え費用)の他には、どのような費目が含まれますか。

    瑕疵修補費用(取壊し・建替え費用)以外に賠償請求が可能な損害としては、①瑕疵修補期間中に仮住まいをした住居の賃料相当額、②欠陥のある建物と仮住まいの住居との往復の引越し費用、③建築士等による欠陥調査の鑑定費用、④訴訟することでかかった弁護士費用、⑤欠陥と相当な因果関係がある限度におけるその他雑費(修補の交渉のための交通費や専門家への相談料等)等が挙げられます。

    欠陥のある建物が店舗用建物であったり賃貸用住居であったりした場合には、営業用の代わりの建物の賃料相当額や受けられるはずであった賃料相当額、休業損害も請求できます。

    また、請負契約の解除や取壊し・建替えが認められた場合には、重大な欠陥があった建物に関する諸費用(表示登記・保存登記にかかった費用、不動産取得税、住宅ローンのための抵当権設定登記にかかった費用、住宅ローン金利、火災保険料等)も損害となり得ます。

    なお、慰謝料については、財産的な損害が賠償されれば精神的な損害も回復されるという考えに立つ裁判例もありますが、生活の本拠となるマイホームの購入という一生の買い物において欠陥住宅問題に直面したことで、精神的損害が発生したということは充分に可能でしょう。欠陥の重大性や箇所の多さ、使用上の不便さ、建物完成前の期待感の大きさや欠陥判明後の不安感の大きさ等の諸事情を考慮した上で、最近では、慰謝料の請求を認める裁判例も増えています。

  • 土地の所有者の行方が不明ですが、このような場合でも交渉をすることはできるのでしょうか。

    弁護士は、土地の所有者の行方が不明な場合に、不動産登記簿、住民票、戸籍謄本等の調査をすることができます。

    これらの書類を取り寄せ、現在どこに住んでいるのか、既にお亡くなりになっているのか、相続人は誰なのかをお調べします。

    万が一、それでも見つからない場合には、不在者財産管理人や、相続財産管理人の選任を裁判所に求める等の方法も用意されています。

  • 所有権の取得時効はどのような場合に認められますか。

    所有権の取得時効は、一般的には①「物」の占有、②「所有の意思をもって」する占有であること、③「平穏かつ公然」の占有、④①~③が一定期間以上継続すること、という要件を満たした場合に認められるとされています。

    但し、長期間占有を続けたとしても、所有権の取得時効は、所有者と同じように物を排他的に支配しようとする意思をもって占有を続けた場合に限り認められるという点には注意が必要です。

    これは、所有権の取得時効が、時効によって権利を取得する人がいる一方で、権利を失う人もいるということが背景にあります。

    どのような場合に、上記の意思が認められるかについては、占有をするに至った原因や占有中の事情が考慮されます

    長年使用していた建物を建て替える時に、土地の一部が他人名義であった場合等に取得時効の問題が顕在化することが多いですが、取得時効の主張が認められるか否かについては個別のご事情をお伺いする必要がありますので、まずは専門家にご相談されることをお勧めします。

  • 抵当権の抹消登記手続請求はどのような場合にできますか。

    抵当権というのは、被担保債権(住宅ローン等)のために設定されているものであるため、被担保債権が消滅した場合に抹消登記手続の請求ができます。

    他には、抵当権設定契約自体に錯誤があった場合や、当該契約に意思能力がない者が関与した場合等にも抹消登記手続の請求が可能です。

  • 貸室内で賃借人の自殺があった場合の賃貸人、宅地建物取引業者の告知義務、賃借人側の損害賠償請求責任について教えてください。

    ①賃貸人の責任について

    賃貸人としては、過去に自殺があったか否かについては、伝えておいた方が望ましく、特に自殺後間もない時期に賃貸する場合には賃貸借契約締結の際にこれを告知する義務があります。

    告知をせずに賃貸借契約を締結した場合には、賃借人の側から錯誤無効(民法95条)の主張されることや、告知義務の違反を理由に詐欺取消(民法96条)や損害賠償請求をされるおそれがあります。

    ただし、時の経過とともに、事故物件による心理的な嫌悪感は薄れるものとも考えられるため、裁判例上は、自殺事故が発生した建物の場所、使用状況、自殺事故の内容等を具体的に判断し、告知義務はないとしたものもあります。

    告知義務があるか否かは個別的な事情によりますので、まずはご相談下さい。

    ②宅建業者の責任について

    建物賃貸借契約の仲介をする宅地建物取引業者は、自殺の事実を知っている場合には告知義務があります

    (宅建業法47条1号ニ)が、自殺事故の有無について積極的に調査する義務はないと考えられています。

    ただし、調査義務については、あくまで一般論としてそのように考えられているだけであり、個別具体的な事情によっては調査義務の範囲内であるとされる可能性もあります。

    宅建業者が重要事項を告知しなかった場合には、2年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性もあり、場合によっては賃借人から損害賠償の請求がされる可能性もあります。

    そのため、以上のようなリスクを負っていることを念頭に置いた上で、建物賃貸借契約の仲介業務をする必要があります。

    ③賃借人側の責任について

    上記のように賃貸人、宅建業者が責任を負う一方で、当該賃貸借契約の連帯保証人や、当該賃借人の相続人賃貸人から損害賠償請求される可能性があります。

    これは、賃貸借契約の賃借人は、賃貸物件の引き渡しを受けてからこれを返還するまでの間、建物の使用収益について善管注意義務を負っていることが理由です。

    なお、賃借人の相続人は、相続放棄により損害賠償請求を免れることができますが、それまでに単純承認等をしてしまったような場合、多額の損害賠償請求責任を負わなければならなくなる可能性もあります。

  • 私とお隣さんは長年ここの土地に住んできましたが、先々代の頃に土地の境界が不明確であるとの問題が起こったようでした。今般、私の土地の上に離れを建てようと、お隣さんとの境界線付近の土地を整地したところ、大昔の境界標が掘り出されました。どうやら私の家は、50年以上にもわたって、お隣さんの土地に食い込んで塀を立て、花壇として使用してきたようです。正当な境界線に従うと、土地が狭すぎて離れが建てられなくなってしまいます。お隣さんには悪いのですが、塀の内側の私どもが長年使用してきた土地については所有権を主張する等したいのですが、可能でしょうか。

    もとはお隣さんの土地であったもののあなたが長年使用されてきた土地(以下「本件土地」といいます。)については、あなたは所有権の主張及び分筆をした上で移転登記せよとの請求をすることができる場合があります。

    まず、本件土地があなたの所有となる法律的な原因ですが、本問では取得時効というものが考えられます。土地の取得時効が成立するには、①所有の意思をもって10年間平穏・公然に土地の占有を続け、自分にその土地の所有権があると信じていて、そう信じることに過失(落ち度)がない場合、または、②他人の土地を20年間所有の意思をもって平穏かつ公然に占有を続けた場合、のいずれかの場合で、土地を占有してきた人が「取得時効によりその土地の所有権を取得します」と表明すること(「時効の援用」といいます。)が必要です。

    そのように本件土地の取得時効が成立した場合でも、「境界」の2つの意味のうち、公法上の境界(国が決めた地番の境目)が自然に移動したり設定されたりするものではありません。あくまでも、土地の所有権の境目という意味の私法上の境界が、本件土地とお隣さんの土地との境目に移ったというイメージになります。

    土地の所有権は、登記をしないと第三者に主張することができませんので、あなたは本件土地の登記をしておくべきですが、1筆の土地の一部分だけに所有権移転登記をすることはできませんので、お隣さんに対しては「あなたの土地から私が今回時効取得した土地を分筆した上で、その土地の所有権登記を私に移転してください」という請求をすることになります。ですので、そのようにあなたが今回時効取得した土地と、元来よりあなたが所有していた土地とは、合筆という手続をしない限り、土地の個数としては合計2個(2筆)ということになります。

  • 隣の家の桜の木と柿の木の枝が塀を越えて私の土地の上にまで伸びてきていて、季節によっては落ち葉や毛虫で大変迷惑しているんだけど、お隣さんに言っても切ってくれないから私が切っちゃっていいよね? あと、柿の実も私の土地に落ちてくるんだけど、迷惑料ということで食べていいよね。

    まず枝の点ですが、民法では、越境された側が勝手に切ることはできず、あくまでも木の所有者に対して枝を切るよう請求することができると定められています。そのため、越境されて腹立たしいのを堪え、あくまでも、お隣さんに越境した枝を切ってもらうよう請求するべきです。何回請求しても切ってくれないという場合でも、勝手に切ってしまえば法が禁止する自力救済ということになってしまいますから、裁判所から「枝を切りなさい」との判決をもらった上で強制執行するか、緊急のときは仮処分命令をもらって切除することになります。

    なお、民法では、越境して出てきた木の根については、越境された側が切ることができると定めています。ただし、そのような根も、木を枯らしてしまうような切り方をしてしまえば、権利の濫用として、根を切った人に損害賠償責任が発生する可能性があります。

    次に柿の実の点ですが、民法では、木の実のような天然果実は、元物である木から離れる瞬間に、その果実を収取する権利をもつ人のものになると定めています。その権利をもつのは、一般的には木の所有者となり、例外的には、木の所有者が特別に果実を取る権利を与えた人ということになると思われます。したがって、お隣さんが何と言うか、裁判になった場合に裁判所がどう判断するかは別として、越境した枝からの果実とはいえ、あなたの土地に落ちたものでも勝手に食べることはできないということになります。

    しかし、お隣さんが適切に木の管理をせずにあまりに大量の葉や実が落ちてきてあなたの土地の効能を害する等の状況までになっていれば、お隣さんに対して損害賠償を請求する余地もあるといえるでしょう。

  • 先日、周りを合計6人の他人の土地に囲まれていて公道に面していない土地を建物付きで購入して住み始めたのですが、公道に出るに当たって、その日の気分で周囲の土地のいろいろな場所を通行していますが、問題ないですよね。あと、どの土地も凸凹があって通行しにくいのですが、土地の所有者に対して、歩きやすいように通路として整えてくれるよう請求することはできますか。

    まず通行の場所の点ですが、あなたが買われたような袋地については、民法上、その所有者に袋地通行権(公道に至るため、他人の土地を通行できる権利)が認められています。ただし、通行してよい場所についてはその日の気分で好きなところを通れるわけではなく、あなたにとって必要であり、かつ通行する土地にとって損害が最も少ない部分とされています。そして、原則として、通る土地の所有者に償金を支払うことが必要となります。

    ただ、このような法律の規定からだけでは、必ずしも明確に誰の土地のどの部分を通ってよいのかはっきりしないともいえます。しかし、少なくとも、公道との位置関係その他の事情から、誰の土地を通るべきかは分かる場合が多いですので、あとはその土地の所有者との間で、土地のどこの部分を通行すべきか、いくらの償金を支払うのか、話し合いで決めるのが望ましいでしょう。

    なお、公道との位置関係からして、法律上の袋地通行権による通行が認められない他人の土地であっても、その土地の所有者が認めてくれるのであれば、通行することは可能です。これは合意による通行権(通行地役権等)の設定と呼ばれますが、後で問題とならないように、通行する場所や方法・条件等についてきちんと話し合い、通行地役権設定契約書等の書面に残しておくことが重要です。また、通行地役権は第三者に対しても主張できるよう、登記しておくべきです。

    次に通路の開設の点ですが、法律上は、袋地通行権を主張して通行できる対象の土地の所有者に対しても、通行権者が「通路を開設しなさい」とは請求できず、あくまでも通行権者自身が「必要があるときは通路を開設できる」とされています。したがって、通路を開設する場合は、あなたの費用負担でするということになります。

    袋地通行権も、そのための通路の開設権も、法律上は通行者の権利として定められており、通行されることになる土地の所有者が拒んだとしても認められるものではありますが、継続的な通行という点でかかわりが続いていきますので、よく話し合い、お互い納得する形での通行を実現させる努力をすることが何よりも重要です。

  • 私の土地は裏手一帯に竹やぶがあって通ることができず、前面も公道に面していないので、同じような条件にある両隣の土地の所有者らと話し合い、3人で公道に至るまでの土地を共同購入し、私道を開設しました。しかしながら、私道の出口付近に住む私道の共有者ではない人が、私が頻繁に軽トラックで通行することを快く思っていないらしく、私道の出口部分に木製の杭を2本打ち込み、軽トラックが通れないようにしてしまいました。どのような対応が可能でしょうか。

    あなたは私道の所有者(共有者)でいらっしゃいますので、今回の杭打ち行為は、他人があなたの所有物である土地の使用を妨害する行為であるといえます。そこで、あなたは杭を打った人に対し、単独で、所有権(共有持分権)に基づく妨害排除請求権を行使し、打ち込んだ杭を抜くよう請求することができ、損害が発生していれば損害賠償請求をすることもできます。

    もし、あなたがこの私道の所有者(共有者)ではなく、たとえば他人の私道に通行地役権を設定してもらっているような場合でも、法的な通行権が設定されていれば、それは保護されるべきものですから、理由なくあなたの通行を妨害してくる人に対して、妨害排除請求、損害賠償請求ができます。

    これらの申入れをしてもなお、杭を打ち込んだ人が杭を撤去しない場合でも、自力救済は原則として禁止されていますので、あなた自身が杭を撤去して廃棄処分する等はできません。そこで、裁判を経て強制執行することになりますが、それでは時間もかかりますし、1日でも早く軽トラックで通行する必要性(保全の必要性)も認められると思いますので、まずは管轄の裁判所に通行妨害禁止等の仮処分を申し立て、その仮処分決定をもらわれるべきでしょう。

  • 私の家と隣家との間には塀がなく、家の中にいてもたまにお隣さんと目が合うこともあるのですが、プライバシーのこともあり、適当な塀を造りたいと考えています。特にお隣さんとは関係が悪いわけではなく、土地の境界線に争いもありません。どのようにお話し合いを進めたらよいでしょうか。

    まずは、民法の規定に従って、2棟の建物の異なる所有者間で双方均等な費用負担をもって、土地の境界線の上に塀を設けるという方法があります。どのような材質の塀にするか、どれくらいの高さの塀にするか等は、お隣さんとのお話し合いによるということになりますが、お話し合いがつかない場合には、塀は「板塀又は竹垣その他これに類する材料のもの」で、かつ、「高さ2メートルのもの」でなければならないと定められています。お隣さんとの協議が調わない場合には、お隣さんの協力(承諾)を求めるための裁判を起こさなければならないとされており、お話し合いがつかないからといって、民法に定められたような材質・高さの塀を勝手に境界線上に立て、その費用の半分をお隣さんに請求することはできません。

    2つ目の方法ですが、そういったお隣さんとの協議が面倒であるということであれば、全てあなたの費用負担で、あなたの土地の上(土地の境界線の内側)に、あくまでお隣さんにはみ出さないような形で塀を造ることができます。これは、あなたが所有している土地はあなたが自由に使うことができるとの原則から認められるものです。

    ただし、権利は濫用することはできず、所有権も一定の制約を受けますので、たとえば造った塀があまりにも高く、お隣さんに威圧感を与え、通風や日照を妨害するようなものであったり、あまりに奇抜なデザインでお隣さんを不快にさせるようなものである場合には、あなたが損害賠償責任や塀を撤去する責任を負う可能性もあります。したがって、あなたが全て費用負担してあなたの土地の上に塀を造るとしても、塀の外観や材質・高さについては、一般常識・社会通念の範囲内のものであることが求められることになります。

  • 不動産に関するトラブルを解決する方法・手続は、どのようなものがありますか。

    不動産に関するトラブルを解決する方法・手続については、主なものとして①示談交渉、②調停、③裁判、④強制執行、⑤借地非訟手続があります。

  • 示談交渉は具体的にどのようなことをするのですか。

    示談交渉では裁判所等の第三者が関与しない形で相手方と話し合いをします。

    具体的には内容証明郵便を送付して、書面や電話で話をすることになります。

    示談交渉は、裁判等とは異なり早期に解決することができるメリットがあります。

    一方で、あくまで話し合いによる方法ですので、相手方が応じず、示談交渉で話がまとまらない場合には、調停や裁判等の手続へ移行する必要があります。

  • 調停について教えて下さい。

    調停を簡単に説明すると、調停委員を間に挟んだ形で裁判所において相手方と話し合いを行う手続です。

    あくまで話し合いを中核とする手続のため、強制的に言い分を認めさせることはできませんが、裁判所が後見的な立場に立って当事者間の紛争に介入することにより、話し合いが円滑に進むことが期待されます。

  • 訴訟(裁判)について教えて下さい。

    訴訟は、相手方が任意に応じない場合に、裁判所に訴訟提起をして行う手続で、請求が認められた場合には、強制執行手続により強制的に権利を実現することが可能となります。

    訴訟提起から一審判決までは、6か月~1年程度のケースが多く、示談交渉に比べて解決まで時間がかかりますが、強制的に権利を実現することができます。

  • 強制執行について教えて下さい。

    訴訟(裁判)等により確定した権利を実現するための手続を総称して強制執行手続といいます。

    例えば、未払賃料に関する請求が訴訟(裁判)で認められた場合で、相手方が任意に支払に応じないときには、強制執行手続により強制的に未払賃料を回収することできます。

    他にも、建物の明渡しに関する請求が訴訟(裁判)で認められた場合で、相手方が任意に建物を明け渡さないときには、同様に強制執行手続により相手方を強制的に建物から退去させることができます。

  • 借地非訟事件について教えてください。

    不動産に関するトラブルのうち、「借地」に関する紛争の一部については、借地非訟事件手続というものが法律上設けられています。

    これまでの説明の通り、基本的に示談交渉で話がまとまらない場合には、調停や訴訟手続に移行せざるを得ないところなのですが、借地に関する紛争の一部には、実態に即して柔軟な手続で紛争を合理的かつ迅速に解決することが望ましいという観点から特別に設けられた手続です。

    借地非訟事件手続の対象となる事件は、①借地条件の変更及び増改築の許可申立事件、②契約更新後の建物の再築の許可申立事件、③土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可申立事件、④建物競売等の場合における土地の賃借権の譲渡又は転貸の許可申立事件、⑤借地権設定者による建物及び土地賃借権譲受(又は転借)申立事件があります。

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