弁護士コラム

民法等の一部を改正する法律案が成立しました

令和3年4月21日の参議院本会議において、民法等の一部を改正する法律案が可決、成立しました。
この法律案は、現在の所有者が分からない「所有者不明土地」の解消を目指すものであり、令和6年を目途に施行されることになります。

「所有者不明土地」の問題は、相続・不動産を取り扱っている弁護士であれば、誰もが一度は直面する問題であり、国の制度設計のミスが根本的な原因となっていました。

土地を譲り受けたり、相続したりした場合には、法務局で不動産登記申請をして、名義変更を行います。新たに土地を購入したにもかかわらず所有権移転登記申請(名義変更)をしない方はまずいないと思いますが、これまで相続登記は義務ではなかったため、土地を相続したにもかかわらず相続登記がなされないケースは多くありました。

不動産登記簿には、所有者の氏名と住所を登録することになっています。
相続登記が義務ではなかったことと同様に、住所変更登記が義務ではなかったことも問題ですが、より大きな問題は、不動産登記簿に「本籍」ではなく「住所」を登録する制度となっていることです。
住民票の除票及び戸籍の附票の保存期間は5年間とされていたため(令和元年6月20日施行の住民基本台帳施行令の一部改正により、現在は150年間となっています)、不動産登記簿上の所有者が5年以上前に死亡している場合には、すでに住民票の除票及び戸籍の附票が廃棄されており、不動産登記簿に登録されている「住所」からでは、その法定相続人を調べることができません(実務的には、住所と本籍が同じである可能性、近隣への聞き取り調査、行政への照会などによって、法定相続人の調査を試みることになります)。

以上の理由から、長年相続登記がなされずに放置された土地の場合には、不動産登記簿上の所有者の法定相続人を調べることができず、その利用・処分等ができないという事態が発生していました。

今回の法改正では、上記のような事態が発生することを予防する趣旨で、相続登記を義務化し、その手続も簡素化しています。
また、すでに所有者不明となってしまっている土地に対するフォローとして、所有者に代わって管理人が管理・処分できる制度、所在不明者の共有者を除外した形で共有地を利用・処分できる制度などを新設しています。

法務省の調査によると、「所有者不明土地」は、国土全体の約2割に上るとされています。
相続・不動産を取り扱っている弁護士としては、もっと早い段階で法改正を行うべきであったと思いますが、今回の法改正により、「所有者不明土地」の解消が進んでいくことを願うばかりです。