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足底の悪性黒色腫を疣と誤診して1年10カ月治療した後60代女性が死亡した事例

事案

60代の主婦が足の裏のいぼで近所の皮膚科を受診した。医師は尋常性疣贅(普通のいぼ)との診断で1年10カ月いぼを取る治療を続けたが奏功せず、再発を繰り返すことから生検をした所悪性黒色腫であったことが判明し、東大病院に紹介したものの、既に全身に転移しており、治療の甲斐なく死亡した。

事務所の対応

経過としてはいぼの治療をしていたものが後に悪性黒色腫と診断されたことは明らかでしたが、医師・医療機関側は、当初はいぼであったが、その後いぼに隠れていた母斑(ほくろ)が刺激により悪性化し悪性黒色腫となったもので、当初の診断は間違っておらず過失はない旨主張しました。当事務所では、医師・医学博士である弁護士が、最新の医学文献を当たり、かつては通常の母斑(ほくろ)が刺激により悪性化するという説が唱えられていたが、現在その説はほぼ否定されており、当初から悪性黒色腫であった可能性が極めて高い事を立証しました。初期の段階でのいぼ・母斑の画像が保存されていないことから、初期の段階で診断可能であったかどうかは立証が困難でしたが、仮に診断が困難だったとしても数か月たって治癒しない以上生検等の検査を行うか、高度な診断ができる医療機関に転院させる義務があったとの主張をしました。
両者の主張が平行線となったところで、裁判所の和解勧告があり、和解が成立しました。

解説

診療に当たった医師は、「通常の母斑(ほくろ)が悪性化した」と言う主張を繰り返しましたが、最新の医学文献に当たる事で、これを覆すことができた事例です。「最新」とは言いましたが、通常の母斑(ほくろ)が悪性化する事はほとんどなく、悪性黒色腫はもとより悪性黒色腫であるという事は学会で話題になっており、開業医とは言え、恐らく被告の医師もそのことは知った上で、敢えて自分に都合の良い説を主張し続けたのではないかと推測されます。
医療訴訟においては、医師・医療機関の主張には時に嘘とは言わないまでも自らに都合の良い牽強付会の理屈がはいりこんでおり、それを見抜くことが重要である事を示す一例でした。

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